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離婚でも別居とも違う?熟年夫婦に広がりつつある”卒婚”とは

子どもが成長し、親元から巣立った後に残ったのは熟年夫婦2人。長い結婚生活の中で、良くも悪くも苦楽を共にしてきたパートナーではありますが、「夫婦だけで残りの人生を過ごすのは嫌」「子育ても終わったし、パートナーからも解放されたい」「実は別居・離婚を検討している」など、子育てが終了した熟年夫婦の間には意外にも多くの悩みがあります。

離婚や別居をするまでのパワーと労力はかけたくない……、でも夫または妻から解放され、自由に人生を楽しみたい。そのような想いから近年増加傾向にあるのが「卒婚」です。今回のコラムでは、離婚・別居という選択とは異なる位置づけとして注目を集めている新しい夫婦の人生設計について紹介したいと思います。

卒婚とは?離婚や別居とはどう違うのか?

卒婚とは、簡潔にまとめると「離婚しないままお互い別の人生を楽しむ」ことを意味します。つまり、婚姻関係はそのままにしておくものの、結婚生活は卒業。夫婦それぞれ自立した生活を送るというのが基本スタイルです。2種類の卒婚パターンがありますので、まずはそこから解説していきます。

■ 離婚はしないけど別居はする

近年増え続けていると言われるのがこちらのパターン。籍はそのままですが、住む場所は別。お盆や新年のご挨拶、誕生日など家族行事など、イベントのタイミングで会うスタイルです。普段の生活にパートナーが介入しないのが特徴です。

■ 離婚も別居もしないけどお互い独立した状態

外から見れば家庭内別居では?と思われそうですが、家庭内別居は夫婦関係が完全に冷戦状態で2人の仲も非常によろしくない状態です。卒婚の場合は相手を尊重しながらも、必要な時以外は無関心であることが基本姿勢。余計な干渉をしません。

卒婚が離婚・別居と大きく違うのは夫婦の精神面です。離婚をしていないという安心感がある一方で、お互い干渉せず自立して生きていこうと同じ目線に立って人生を送るため、離婚や別居の時に感じるような相手に対する嫌悪感などは発生しません。

卒婚のメリットとデメリットは?

何かと都合が良さそうな卒婚ですが、メリット・デメリットそれぞれあります。卒婚を実際に考えている人は、必ずチェックしておきましょう。

〈卒婚のメリット〉

1. 離婚の手間が掛からない

離婚申請は面倒です。特に姓が変わってしまった妻は離婚をした場合、戸籍はもちろん、免許証・通帳・クレジットカードなど、個人情報が明記されたものを全て変更手続きしなければなりません。

2. 合意があればすぐに夫婦に戻れる

卒婚によりお互いの距離間ができたことで、昔のような仲の良さに戻る夫婦も少なくはありません。離婚届けを出しているわけでもないので、合意さえあればすぐに元の生活にも戻れる気軽な関係です。

3. 自由が手に入る

パートナーがいたから我慢していた・合わせていたという人にとって、卒婚はまさに「自由を手に入れた!」という感覚になるでしょう。好きな趣味に没頭できる、誰にも文句を言われない自由な時間を残りの人生で謳歌できます。

4. 周りの目も気にならない

離婚をしていないため、家族や親族にも報告する必要がありません。「離婚」という言葉に付きまとわれることもないので、気持ちの部分でもストレスが溜まりにくいと言えます。

〈卒婚のデメリット〉

1. 卒婚を知らない人が多いため理解されにくい

卒婚は新しい言葉であり、認知されているのもごく一部です。昔からの「夫婦」の在り方を知る人からすれば、理解をされにくい傾向があります。

2. 恋愛ではなく不倫になる

卒婚で自由に過ごしている時に出会ってしまった新しい恋。相思相愛だったとしても離婚をしていないという事実から、恋愛ではなく不倫となります。

3. 経済的に自立していないと難しい

別居を想定した卒婚を望むとそれだけでも費用が掛かります。また、専業主婦だった妻が金銭面で夫に依存し過ぎてしまうのも問題です。最初は良くても経済的な負担から本気の離婚に発展する懸念もあります。

4. タイミングを逃すと難しい

卒婚に40〜50代が多いと言われているのは、ギリギリ自分で稼げる歳だからです。定年を越えてしまうと、経済的に難しくなる場合があります。

なぜ熟年夫婦が卒婚を選びはじめるようになったのか?

40〜50代の熟年夫婦が離婚ではなく卒婚を選択するケースが増えているという背景には、熟練離婚に対するデメリットが考えられます。年老いていくからこそ垣間見えるそのデメリットについてまとめてみました。

■ いつ介護が必要になるか分からない不安

若い頃よりも体力が衰えている40〜50代は、体調を崩してしまうことも珍しくはありません。思いも寄らぬタイミングで病気が発症して介護が必要になるというケースも……。夫婦共に可能性がある中で、いざという時にお願いできる唯一の相手がいなくなることはお互いに不利です。

■ 孤独死になる可能性がある

日本が抱える悩みの1つに高齢者の孤独死があります。熟年で離婚をすることは、つまり孤独死になる確率を自ら引き上げているのと同じです。

■ 離婚によって失うお金が発生する

熟年離婚で大きな問題となるのが金銭です。相続財産や年金、死亡保険金など離婚によって得られなくなるお金が発生しますので、本気で離婚を視野に入れている夫婦は金銭面の整理をしっかりとクリアにしておきましょう。

卒婚を選ぶにあたっての注意点

少しずつ広がりを見せつつある卒婚という新しい夫婦の形について説明をしましたが、いかがでしたでしょうか。「お互いの経済状況が潤っている」「心身的に自立している」このような熟練夫婦であれば、離婚や別居よりも「卒婚」の方が現実的です。とはいえ、いきなり実行するには勇気がいるのもまた事実。失敗しないためにも、まずは一時的にお試しで別居してみるプレ卒婚を実践した上で判断をしてみてはいかがでしょうか。卒婚は相手を尊重した上で成り立つ関係です。思いやりのある夫婦の延長という意識を持って、卒婚について考えてみてください。